結局、よくは解らない評【化物語】

化物語、骨子要約。昨日一昨日の続き。
 
 
自分にあるのは、恋の成就を否定する要素ばかりであり、
対するライバルにあるのは、メリットばかり。
 
もう少し細かく追ってみると、
 
1.カニ
最初のエピソードで、「偶然」を強調。
 
自分の他人に受け入れられるはずがないと結論するに十分な
デメリットの羅列。
 
2.マイマイ
第二のエピソードは、
躊躇のないスキンシップと対等感。あたかも裏表無く、
無邪気にじゃれ合える関係。
 
加えて、
自分に向けられた行為は「同情」に過ぎないのではないか?
という疑念の強化。見ず知らずの他人(怪異)にまで、
身を砕く主人公を見せつけられる。
 
及び、理解できない相手を信頼できるのか?
 
3.サル
第三のエピソードは、
おそらく主人公と同じオタク趣味を持った趣向の相手。
同志的な意気投合と本気の討論。
 
神の視点…視聴者に提示されている情報…からは、
そこがくっつく可能性はまったく無い存在ではあるんだけど。
 
4.ヘビ
第四のエピソードは、
ベタなほどに男ウケ要素の集合体のような対象。
無垢な妹キャラ。男に信頼・尊敬を向けていて、
守ってあげたいと思わせ、助けて上げないと壊れて
しまいそうな…亭主関白的な理想型。
 
ここで、彼の行動原理が、親密さに左右されないことを再び強調。
彼は、守ろうとした娘だけでなく、彼女を呪った存在にまでも憂慮を示す。
根源的に、それらを見極めようとしないタイプの人間だったわけで…。
 
で、クライマックス。
 
5.ネコ
第五のエピソードは、
エンディングの後に配されていて、補完的なものなのだけど、
その完璧超人は、前頭葉的にも、情動的にも、社会的立場にあっても、
好意の有無においても、彼の趣向に合致している存在だとして描かれる。
 
しかし、彼は彼女に乗り換えることはないとの結論へと結ぶ。
 
 
何が両者を別っているのか…。
「損得勘定」でも、相手を想う「思いの強さ」でもない。
 
…。
 
言うなれば、それは、先約性。
先に意志を示した。先に約定を結んだ。
…早い者勝ち…こそが、絶対の条件だ…と示している。
 
そんなもので?
 
 
 
おそらくきっと、
 
こういう恋愛に積極的でないオタク的なタイプは、
そもそも優先順位を主観的に決められない存在なので、
ある程度のパラメーター的な優劣の存在によって、
損得勘定で優位な要素のある方へと乗り換える…という決定が
できない…って事になるのかな。
 
そういう相手の場合、この先約性のような、
自己設定というか、ケジメというか…が重要になってくる。
 
で、既成事実というか、共に重ねた時間の連続と、経験の積み重ねこそが、
それこそが、二人の絆の重みとなってゆくのだろう…と。
(これは、刀語で描いていた二人の関係に通じる)
 
 
だから、自分から奥手になる事は、結局、無意味なんだよ…と説く。
 
 
 
エンディング・ソングのような、「悲恋」に終わらないためにに、
必要なことの「核心」を教示することが、この作品の意義なのかな。って。
 
もちろん、自己否定だけが悲恋の唯一の原因である訳でもなく、
「相手に断られる」という失恋体験に終わる場合もあるだろう。
だけど、少なくとも、可能性は無くはない事が決定的な訳で…。
 
 
 
対して、
 
これらエピソードを、主人公目線で追ってみても、
物語を牽引する葛藤も弱いし、成長を窺わせる段階もない。
エピソードのこの順序にも、その面から必然性をあまり感じない。
 
ただ降り掛る災禍に順次即応しているだけ。
 
主格として視点設定されてはいるけれど、やっぱり、
物語のプロット…骨組みの組み立て方から追って見ると、
ヒロインの物語になってるんじゃないかな。このお話は。
 
 
 
…、そんな感じに私はこの作品を解釈してきた訳なんだけど、
この作品を支持している人たちに どう受け入れられ、どう影響し、
それが好転を来たす作用を及ぼす物となって いるのかどうか…が、
いまいちピンとこない。
 
それが判らないから、評価として、どう評して良いのか解らない。
 
そこんところを、誰かに聞いてみたい…と思う*1

*1:思うだけ